経理と総務

2021年10月12日

こんにちは、美波です。

経理職への就職を目指し、簿記2級まで取得し、いざ就職したものの、配属先は総務部だった、なんてことがあります。

会社の規模や方針にもよりますが、経理というのは意外と兼務に近い形で配置されることがあったりします。

今回は、新卒で経理を目指す方や、転職で初めて経理を志望する方向けに、会社における経理の立ち位置を解説したいと思います。

経理だけど、経理じゃなかった

経理というのは季節労働者です。

というと、「はぁ?」と思われるかもしれませんが、経理というのは決算時期が猛烈に忙しく、その他は意外と落ち着いた業務内容であることが多いです。

そのため、決算時期は他部署の同僚から同情の目で見られ、それ以外は羨望の目で見られます。

そして、同僚にとっての羨望が、使用者にとっては「人件費の無駄」と捉えられることがあるのです。

さて、会社にとって経理は必要。さりとて、当の経理は最近暇そうである。そう感じた使用者は何を考えるでしょうか。

「暇なら、その時期は経理以外のこともさせておけばいいんじゃないの?」そう考えるのが一般的な考え方ではないでしょうか。

かくして、「総務部経理課」であったり「総務課経理係」といった配置が出来上がるわけです。

総務部経理課のデメリット

上記のような思考回路で出来上がった、下部組織としての経理職。実は結構忙しいことが多いです。

例えば会社で新規採用職員の研修会があったとき。人手が足りない、ということで、経理の研修以外に社内ルールや文書の作成方法についても講義を担当させられたり、もっと言うなら企画の段階で庶務課の職員を差し置いて主担当にされたりします。

当然、年度末の退職者の手続きや、年度初めの新規採用職員の手続きにも駆り出されますし、その日が会社の決算日と重なっている(=3月31日が決算日である)場合などは、会計の閉鎖・開始作業とのダブルヘッダーで相当大変な目にあいます。

また、給与計算や勤怠管理、職員の有休や休職等の労務管理と経理を抱き合わせにする会社などもあり、これは会社の職員数によっては毎日本当に忙しいです。

個人的な見解ですが、職員数が100人を超える会社で、経理と給与の担当者が同人物にされている会社は、経理職的には相当ブラックな会社だと感じます。

というのも、経理には見込計上という考え方があり、例えば決算が3月31日なら、3月に支払義務の発生した給与については、たとえ実際に支払うのは4月であったとしても3月経費として計上すべし、という処理をします。

一方、給与計算においては、3月だろうが4月だろうが、払うときが費用発生日です。たとえその内訳が先月の労働の対価だろうと、先々月の立替交通費だろうと、4月に払うならそれが4月給与です。

上記のように、経理と給与は、その根ざす思想に大きな乖離があります。これを新人に、それも同時にさせるというのは、相当に負担となるはずです。

あと、個人的に嫌なのは、窓口対応をさせられる可能性があるということ。

専門の受付窓口を持っている企業などはいいのですが、小規模な会社などは、通常、窓口や代表番号を総務部・総務課に置くことが多いです。

すると、まぁ沢山の電話がそこを目掛けて掛かってきます。

「落ち着いて仕事がしたい」そう考えて経理職を志望した方にとっては、この「聞くまで要件が分からない電話」というのは心理的な負担になります。

総務部経理課のメリット

一方で、 下部組織としての経理職 にもメリットはあります。

1つ目は、総務全般の知識がまんべんなく身に付くということ。

経理をいかに極めようとも、経理はそれ単体ではやはり偏った知識です。

数字を作り出すには、給与の成り立ちを覚え、労働保険の算定や諸手続きを覚え、社会保険料や税金の負担を考え…といったように、会社の数字に纏わるあらゆることの大枠を把握する必要があります。

「総務全般におけるジェネラリストであり、かつ経理におけるエキスパートである」というのは、法人運営にとって最も重要な要員であり、その役割は内外から高く評価されることでしょう。

2つ目は、逆説的な言い方になりますが、「経理部・経理課の下部組織としての採用でなくてよかった」ということです。

経理、というポジションが会社で確立されており、その中で例えば売上管理の専任職員として採用された場合、その人は経理の全体像を知ることなく、経理=売上管理だ、という誤った認識の中で経理人生を歩むことになります。

それは、経理職の市場価値、という意味においては最も価値の低い結果となります。

経理職経験あり、と言っておきながら、その実は売上管理しかしたことがない。決算書も見たことがなければ、伝票を切ったことすらない。もしこのような人が転職を希望する場合、まず経理職での採用は困難です。

中途採用の経理職を募集する企業は、ほぼ100%、経理に対する知識を有した人間を求めています。

経理の一部を切り取った知識しかない人は、このオーダーを満たせませんので、もし転職を希望するならば、転職前に現在の会社で、異動により業務内容が一巡するのを待つ必要があります。会社に悟られ、飼い殺しにされないように怯えながら…。

経理にこだわりすぎないこと

というわけで、経理職の立ち位置についてでした。

前段落の最後で少し不穏なことを書いてしまいましたが、売上管理の専任職員がいるような会社は相当の大会社と想定されますし、社内のしっかりとした人材育成ルールが確立しているはずですので、あまり心配する必要はないかもしれません。

ただし、やはり経理に限らず、自身の業務と隣接するような仕事については、その大枠だけでも理解しておくに越したことはないですし、経理職というのはそのような兼任をさせられやすいポジションでもあります。

経理職へのこだわりを強く持たれるのは、同じ経理マンとして嬉しく思いますが、あまり固執しすぎることなく、チャレンジ精神をもって隣接業務にも取り組んでみましょう。

そして、その経験を、本業である経理職に活かし、不動の経理担当者としてその地位を確固たるものにしていきましょう!

本日はここまでです。お読みいただきありがとうございました。