新卒向け経理職への就職のススメ

2022年11月24日

こんにちは、美波です。

実は先日、大卒の歳下の従兄弟から、就職について相談をされました。

曰く、大学院進学を断念して、就職浪人状態で、進路について迷っている、とのこと。親御さん(叔父)としては公務員の道を推したいが、本人はお金に関する仕事に興味があり、親戚で経理系の仕事をしている私の意見を聞きたい、とのことでした。

その従兄弟は国公立大学の理系学部出身で、私からすれば真っ当に就職活動をすれば、引く手数多じゃないのかなぁと思いつつも、私の経験(主に失敗談)が少しでも役に立てば、との思いで、色々と話をさせて貰いました。

自身の経歴を振り返るうちに、色々と思うところがありましたので、この場を借りて少し語りたいなぁと思います。

新卒生にとって、経理職は意外と狭き門です。

いきなりですが、経理職を初めから目指すというのは、実は狭き門です。

私は最初に会計事務所への就職を希望しました。ですので経験談ではないのですが、今、いち法人の経理を任されて、使用者の立場で受け入れを考えた時、全くの新卒者を入職させるのは勇気が入ります。

なぜなら、新卒者には、経理に関するハクのようなものが全くないからです。

経理職というのは、本当に、大したことない仕事です。(もちろん、海外取引をバリバリやっていて、国際会計基準やら国際税制やらを扱う大企業は別として、ですが。)職として程度が低い、というのではなく、慣れれば誰でもできる仕事、と私は思っています。

ですが、どんな職種でもそうですが、世の中には向き不向きというものがあります。そしてこの経理という職種は、他よりも向き不向きの落差が激しいように思って仕方がないのです。

具体的に言うなら、仕事は基本、上司に教わりながら覚えるものです。ですが経理というのは、業務内容が完璧に固まっていることが多く、担当者はそのルーティンを崩されるのを極端に嫌います。

ですので多くは、そのルーティンが間違っていても、意味が分からなくても、一度はそれを飲み込み、自分のものにする忍耐力が必要になります。そこに、今の社会で評価されるような改革性は必要とされません。

仕事内容も最初のうちは伝票の整理や電話の取り継ぎが主となるでしょう。安定しているものの、つまらない仕事です。

ドラマであるようなマルサと戦う経理職、プロジェクトを任され会社の改革に乗り出す経理職をイメージしているなら、新卒者にとっては、ほぼ確実に理想とは縁遠い現実が待っているでしょう。

ただでさえ、会社の収益の主役である営業や専門職からすれば、ベテランの経理職でさえ収益を生み出さない会社のお荷物です。(あくまで一般論として、です。「経理はお荷物じゃない!」という経理職の叫びについては別記事を参照して下さいね。)そんな部署に、使えるかどうか分からない新卒者を配置するのは、よほど計画的に人材育成ができている大手企業以外、リスキーな話だと思うのです。

あることをするだけで、経理の門は大きく開かれます。

新卒生が経理職につきにくいというのは前述のとおりです。ですが、ある事をすれば、経理職への就職率はグンと跳ね上がります。それは「在学中に、経理に関する資格を取る」ということです。

経理職がOJT(オンザジョブトレーニング)においてハードルが高いというのは、先ほど述べたとおりですが、その理由は日々の業務がルーティンすぎて、改めて教えるのが難しいからです。

「毎日残高を合わせます」「伝票は日毎に整理してファイリングします」「月に一回月次報告をします」「毎月10日までに前月の所得税を納付します」こういったルーティンなルールについて、ひとつひとつ「何故か」を問われても、現担当者としては正直めんどくさい。部下の質問には誠実に答えるのが上司の責務だとは思いますが、世の中の社会人がみな勤勉とは限りませんし、業務としては当たり前になりすぎて、理由を言語化できない方もいるでしょう。現経理職員の「当たり前」の部分が、新卒生の大きな障害となるのです。

しかし、新卒生が「経理に関する資格」を持っていれば話は別です。経理にとっての「当たり前」のひとつ、「簿記」に関する知識の習得を、資格取得によって証明することができます。

この効果は、実はとても大きく、特に「日商簿記2級」という資格は、非常にコスパが良いことでも知られています。

近年は出題範囲の拡大等もあり、以前ほど簡単な資格ではなくなりましたが、それでも40%弱の合格率でありながら、個人事業から一部の大企業まで、幅広い業態の会社の経理知識の証明になります。

新卒で経理職を希望する際は、日商簿記を2級まで取得し、履歴書に「日商簿記検定2級取得」と必ず書きましょう。他の求職者に比べて、間違いなく2・3歩リードすることができます。

実は経理職は、全体的に人手不足です。

新卒に経理職採用は難しい、とお話ししましたが、体感的には経理職は慢性的に人手不足です。

人手不足なのですが、門戸は開かれていません。OJTの難しさの問題などから、手っ取り早く即戦力となる「経験者」に、市場が独占されているからです。

試しにハローワークの求人ページで「経理職」とキーワード検索してみてください。「3年以上の実務経験必須」といった求人が目につくことと思います。こと経理職については、経験こそ最大の武器なのです。

しかしながら、業種によってやり方が全く違うというのが経理職。経験は武器ですが、万能ではありません。だからこそ普遍的な経理の技能の証明として、簿記の資格は有用なのです。「御社の業態の経理に詳しいわけではありませんが、経理の根幹の知識として、簿記2級を取得しています。」と胸を張って言えることが、新卒生にとっての大きなアドバンテージとなるのです。

欲を言うなら、さらに上位資格を目指しましょう

大学生で、本当に経理職を目指すなら、日商簿記2級が最低必須条件です。これだけでも無資格者に比べれば相当なアドバンテージですが、余裕があるなら、更に上位資格を目指しましょう。

例えば日商簿記1級ならば、工業簿記について更に深い知識が学習できます。

受験資格を満たすなら、税理士試験の簿記論・財務諸表論を受験してみても良いでしょう。税理士試験は、いくつかの組み合わせの中から5科目合格で税理士資格が付与されます。それぞれの科目は独立した資格として扱われ、上記の2科目は会計科目として、日商簿記2級以上の格があります。経理の知識として箔をつけるには、最高級でしょう。

更に、税理士試験には税法科目もあります。難関ではありますが、法人税法に合格すれば、法人の税制についての知識ありということで、大企業の経理部門への門戸も開けるでしょうし、もしも公認会計士試験に合格するようなことがあれば、グローバル企業への就職も夢ではないと思われます(公認会計士試験に挑戦するような方は、監査法人が第一志望になるとは思いますが。)

いずれの資格も、知識の証明になると同時に士業への道も開ける資格となります。それゆえに、採用担当者に「いずれは退職し、独立する気では?」という疑念を抱かせる可能性もありますが、このご時世、選択肢を増やしておくことは決して悪いことではありません。時間のある学生さんは、日商簿記2級で満足せず、更なる資格取得を目指してほしいと思います。

オススメしないのは会計事務所

逆にお勧めしないのは「経理がやりたくて会計事務所に就職」することです。

これは私の経験談なので、あえて言い切りますが、会計事務所は雇用が安定している職場とは言い難いです。

もちろん、しっかりと福利厚生を取り入れ、職員を教育し育てる社風の事務所も存在します。しかし、それが希少に思えるほど、低賃金で労働条件の酷い事務所が大多数です。

そもそもこれらの会計事務所は、「士業としていずれ独立する人達が実務経験を積む場所」とされており、「資格を取っていない半人前」が「修行」する場という認識が根強く残っています。

そのような環境でも、士業として身を立てようとする人は、決して良いとは言えない環境で資格試験に励み、資格を取って独立していくわけですが、多くは過酷な労働環境に勉強もままならず、非常に中途半端な状態で別職種に就いたりします。

ですので、税理士や公認会計士といった士業を目指す人なら選択肢としてはアリですが、単に会計に興味があり、純粋に経理で働きたい、という方には会計事務所はオススメしません。(もっというなら、士業を目指す方も、資格が揃うまでは会計事務所はオススメしません。当たり外れが大きすぎるので、安定した業種の経理職に就く方が勉強時間も賃金も確保できて余程良い、と私は思います。)

まとめ。まずは日商簿記2級を!

ということで、経理職への就職のススメを語ってみました。

とにもかくにも

(1)まずは日商簿記2級を受験しましょう。

   ここで何度も躓くようなら、経理職は向いていないかもしれません。向き不向きの試金石ともなりますので、是非受験しましょう。

(2)余裕があるなら更に上位資格を。

   税理士の会計科目2つや法人税法、公認会計士試験なんかがオススメです。

(3)経理がしたいだけなら会計事務所はオススメしません。

   会計事務所は士業になる方が集まります。単に経理がしたいなら、規模が大きく安定した企業へ就職するのがオススメです。

以上、新卒生向けにつらつらと書いてみました。経理職は、一度仕事を覚えてしまえば、異動も少なく安定した就労ができる職種です。興味がある方もない人も、一度日商簿記試験を受験してみてはいかがでしょうか。無駄にはなりませんよ!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。