経理と決算処理

2021年10月12日

こんにちは、美波です。

経理職が転職をしようとするとき、必ずと言っていいほど尋ねられる、「定番の2大確認事項」が存在します。

そのうちのひとつ、「クセ」については別記事で触れたところですが、今回はもう一つの項目、すなわち「決算経験の有無」について触れたいと思います。

決算処理とは何ぞや

会社には決算というものがあります。

大企業なら4半期決算と言って、決算が年に4回あったりしますが、決算というのは、会社の活動を無理やりに区切る作業のことです。

会社というのは、絶え間なく継続していくことを前提に設立されます。

しかし、例えば課税の程度や業績の判断において、ある一定の区切りをなくして評価を下すのは困難です。

そのため、通常は1年を単位として、会社の活動を区切り、その期間における業績の良し悪しを関係者に開示すること、これが会社における決算の大きな役割です。

決算は経理の晴れ舞台

経理の日々の処理と決算は、その意味合いが大きく変わります。

一連の流れを演劇で例えるなら、日々の処理はあくまで「練習」であり、決算処理は「本番」です。

日々せっせと入力してきた会計処理を土台として、いかにスムーズに、臨機応変に、大勢の観客に成果を披露できるか。これが経理職における最大にして唯一の見せ場ではないでしょうか。

会社は決算書を開示し、関係者に業績を報告する義務があります。

虚偽報告は犯罪です。

が、数字というのは、説明の仕方によってはポジティブにもネガティブにも見せることができます。

「一見すると経営は悪化しているが、前向きな意味合いを持たせることはできないか。」「去年と横ばいでは、関係者に変化を示せない。何かトピックスはないか。」と、この時ばかりは使用者も経理を頼ってくることが多くなります。

「利益だけで見れば確かに前年比でマイナスですが、これは設備投資による経費の増によるものです。来年度は充実させた設備でもって、利益の増加が見込めるでしょう。」「我が社は横ばいですが、同業他社は前年比で大きくマイナスになっています。これは我が社がいち早くネット販売に対応した成果であり、今後の強みになります。」などと回答することができれば、使用者は大喜びで報告書にその内容を盛り込むでしょう。

(ただし、答えたからと言ってなぜか評価には結び付きにくく、逆に純然たる業績悪化の場合は経理のせいにされるという理不尽が付きまといます…。)

決算処理の特殊性

そんなわけで、決算処理は経理の数少ない晴れ舞台なのですが、この作業は普段の処理と比べるとあまりにも特殊です。

なにせ、会社の活動を「無理やり」に区切るわけです。様々な「無理」が生じます。

例えば、その会社が3月を締め月として決算に挑む場合、3月に売れた商品は、たとえ入金がなくても、3月中の売り上げとしてカウントしなければなりません。

同じく、3月中に買い付けた商品は、支払いが後日になろうとも3月中の経費です。

3月に残業した職員の残業代は4月支給であっても3月の経費として計上しなければいけませんし、3月中に職員が立て替えた交際費や交通費等の経費も同じく3月の経費です。

決算は期限が決まっています。通常、3月決算なら2か月後の5月末には税金を納税する必要があります。

そのため、決算の猶予は最大2か月です。その間に散り散りになった収益や経費を集約する必要がありますが、悲しいかな経理職以外にとって、その数か月はいつもと変わらぬ日常です。

焦る経理職を尻目に、なかなか精算報告等をしてくれない職員も多々いるでしょう。

まずは、これらの非経理職を管理し、時には締め上げて数字を集約していく必要があります。

また、決算では専用の報告書に数字を落とし込む必要があります。

決算書と呼ばれるそれら報告書は、いくつかの種類があり、基本的には会計ソフトが自動で数字を飛ばしてくれるものの、新人の経理職者にとっては聞きなれぬ報告書名が飛び交い、相当混乱するはずです。

また、先ほど触れたように、会社は業績に応じて税を納める必要があります。

税金の計算は通常、顧問税理士を雇い、計算を任せることと思いますが、この計算にしても土台となるのは経理職が作る決算書です。

税額を確定させるため、客であるはずの顧問税理士からも処理を急ぐよう催促されます。

とどめに、大企業の場合、作成した決算書が統一された様式に則っているか、を、公認会計士に監査してもらう必要があります。

公認会計士は中立です。税理士のように顧問として雇われているわけではないので、チェックは相当に厳しく、その指摘は例えば決算書のフォントの大きさや罫線の有無にまで及ぶことがあります。

ただでさえ決算業務に追われる経理職にとって、監査の存在は大きな負担となることでしょう。

決算業務は経理の要

といった具合に、普段は比較的ニュートラルに仕事ができる経理職も、決算時期は目が回るような忙しさに苦しめられます。

普段は殻に籠って従事していた仕事も、他職種の仲間、使用者、取引先、税理士、会計士…と、数々の関係者と折衝・調整をする必要が生じます。

そのため、これを経験しているとしていないとでは、経験値に大きな差が生じるのです。

御幣を恐れず言うならば、10年以上決算を経験せず従事していた経理職よりも、1年間決算を含めて従事した経理職のほうが、市場価値ははるかに上です。

そのくらい、経理職にとっての決算業務は、重要な要素であるといえます。

転職するなら最低1回は決算を経験しよう

決算業務は確かにしんどいです。この時期に数字に追いかけられる夢を見るのは、「経理職あるある」のひとつになっています。私も、永遠に伝票を繰っている夢を何度も見ました。

ですが、同時に決算は、1年の会社の業績を集約し、分析し、報告するという自己表現の場でもあります。

「業績をどのように報告するか」は、普段から数字に触れている者にしか考えることはできません。まさに経理職の独壇場です。

ですので、経理職として転職を考える際には、今の会社で最低1回は決算を経験しましょう。

できる事なら、自分一人で決算をする、あるいは自分が主担となって決算を行う。このくらい、しっかりと腰を据えて決算業務に挑みましょう。

逆に、いつまでたっても決算を任せてくれない職場は、経理職としての貴方を育てる気がない職場なのかもしれません。キャリアを積めず、飼い殺しにされる前に、転職を検討することも必要です。

決算業務を体験することは、経理職の市場価値を最大限に向上させます。ぜひ自身の市場価値を高めて、理想の職場環境をゲットしましょう!