団体職員の年末調整。または年末調整をめぐる士業の争い

2021年12月28日

こんにちは、美波です。

会社の年末調整が始まり、そちらに時間を取られてなかなか更新ができませんでした。

これからの時期、経理職は忙しくなってきますが、何とか時間を確保しながら更新できたらいいなと思っています。

さて、せっかくの年調シーズンですので、団体職員の年末調整の実態についてお話ししたいと思います。

おまけとして、年末調整を巡る士業の業域争いについても触れてみたいと思います。

そもそも年末調整とは

本題の前に年末調整について、概要に軽く触れておきます。

年末調整とは、「労働者」の、「主に給与収入」を精算し、その者の一年間の所得(=所得税)を確定する作業です。

毎月お給料がもらえるサラリーマンを前提とした話になりますが、私たち労働者は、給与支給の都度、会社から所得税を徴収されます。

会社はこれをまとめて税務署へ納税するわけですが、この時引かれる所得税額というのは、基本的に前年の所得に基づいた概算の所得税です。

しかしながら、所得税というのは本来、1年間の所得に対して課されるものであり、毎月の概算では完全に捕捉することはできません。

加えて、所得というのは、給与以外の要素、すなわち、生命保険や国民健康保険、あるいは確定拠出年金(イデコ)への加入、といった要素によっても変動します。

(もう少し具体的に言えば、生命保険や将来に備えた確定拠出年金への加入は、個人の、国への依存を弱める、自助努力と考えられます。国が国税でもって支えるべき個人の負担を、個人が自助努力で軽減しようとする姿勢に対して、国は税の軽減(所得から自助努力に相当する金額を控除し、所得税を軽減する)を認めているわけです。)

よって、給与の支給者たる会社は、税務署と労働者の間に立って、労働者の年間の給与総額その他の要素を再計算し、徴収しすぎた所得税を労働者に返還し、あるいは不足していた所得税を追加で徴収する精算作業を行う必要があるのです。

因みに、年末調整はあくまで個人の「給与収入」に特化した精算ですが、所得を構成するものは給与の外にも不動産収入や株の売買による収入、通院等に係る医療費の支払いなど様々です。

これらの要素は、個人のプライベートな情報であり、会社はそこまで個人情報を把握できません。

よって、そういった情報を含めた所得の精算は、「確定申告」によって個人が自分自身で行うことになります。

つまり、「確定申告」が最も原則的な所得確定作業であり、「年末調整」はそのうちの給与収入のみを取り扱う作業である(=給与以外に収入がない人は年末調整をするだけでOK)、と言えるでしょう。

団体職員の年末調整作業

では会社は実態としてどのように年末調整を行うか、ということですが、団体職員としての年末調整は「全職員の資料の取りまとめ」が主な作業です。

企業規模によっては1000人を超える職員、給与形態も雇用形態も多岐に渡る職員の給与総額を把握するだけならまだしも、その職員ひとりひとりの保険加入状況や、扶養情報をひとつひとつ計算式に落とし込む人的余裕は、どの会社にもないでしょう。

ましてや、準公務員的で、その社会的要請から特定の業域に特化した団体職員法人には、税に関する専門的な処理は不可能です。

従って、職員が提出してきた年末調整に係る書類(扶養控除申告書など)の枚数をチェックし、昨年の書類と比べて大きく変わっているところがないか、生命保険や地震保険の計算が間違っていないか、などの最低限の部分を確認し、あとは給与計算を委託している会社等にお任せすることになります。

ここまで読むと「会社で完結しなくていいなら楽だよね」と思われた方もいるかもしれません。

しかし、普段の仕事に加えて、職員全員の申告書を1人3枚は最低確認しなければならないというのは単純に球のかかる作業ですし、会社的にはこの年末調整の内容が、会社の規程と一致しているか(例えば扶養家族について扶養手当を支給している会社なら、年末調整の扶養内容と所得計算上の扶養が一致しているか、など)を確認しなければなりません。

そのため、普段は会計業務のみを行っている経理職員も、この時期は給与事務職員として駆り出されて、みんな一緒に作業をする必要があったりするわけです。

一労働者にとっては所得税の還付があり嬉しいものであり、経理・給与担当職員によっては仕事量激増の恐ろしい作業、それが年末調整なのです。

年末調整を巡る税理士と社会保険労務士の争い

さて、会社の手によって仕分けされた各種申告書。これらを紐解き、税額を確定させる専門家は、果たして誰でしょうか。

再三述べているように、年末調整の主な目的は所得の確定、すなわち所得税額の確定です。

であるなら、税のエキスパートである税理士の業域である、というのがしっくりきますが、所得の成り立ちを考えると一概にそうとは言えなくなります。

というのも、所得の前提となる所得は、毎月の社会保険料や労働保険料を算定する必要があります。

これら労働者の労働に関する事項は、労務のエキスパートである社会保険労務士の業域です。

さらに、会社の規程と労働者への支給の実態(各種手当が正確に計上されているか、等)をチェックするのも、社会保険労務士の本業の部分です。

つまり、この年末調整をめぐっては、税理士と社会保険労務士が、互いの専門性を主張しながら激しく顧客を奪い合いしている部分でもあるのです。

実際、私が勤めていた会計事務所は、所属の税理士が当然のように年末調整業務を支援し、顧問料を頂戴していましたし、その後知り合った社会保険労務士は「年末調整業務は社労士の本来業務である!」と主張していました。

企業内では経理担当と給与担当が協力して処理にあたり、企業外では税理士と社労士がけん制しながら業務を奪い合う、ちょっと大げさですが、年末調整はそんなドラマを生み出しているのです。

まとめ:団体職員の年末調整とは

というわけで、ちょっとした裏話を挟みながらの年末調整のお話でした。

特に団体職員にとっての年末調整は、あくまで資料の整理、一次的なチェック、ということになるでしょう。

また、経理職員という観点で見るなら、簿記の世界とは縁遠い、非常に給与作業的な業務という位置づけですが、経理が事務職かつ数字を扱うポジションである以上、避けては通れない業務であるといえます。

決算業務の前哨戦として、前向きに取り組んでいきましょう。

今回はここまでです。ここまでお読みいただきありがとうございました。