経理職の良いところ
こんにちは、美波です。
相変わらず経理職の情報発信をしていくわけですが、過去の記事を読み返して、ふと気づいたことがあります。
「あれ……?このブログ、経理の辛いことばっかり言ってて、経理の良いところを書いてなくね……?」
そう、現役経理職員による情報発信ブログを自称し、自身の現在進行形の体験を現場の生の声として届けようとするあまり、気がつけば「ここが辛いよ!経理の特徴!」みたいな記事が多くなってしまっていました。
やはり仕事は何かしら苦労を伴うもの。良い思い出よりは苦労話のほうが記憶に残るようで、ついつい愚痴まがいの記事が目立っておりました。反省。。
もちろん、経理だけがつらい職種、なんて訳はなく、むしろ技術さえ身につければ、他よりもよほど融通の効く職種だと私は思っています。私が経理職員として10年も勤務を続けていられるのが何よりの証拠です(笑)
というわけで、今回は、経理職員の良いところ、を存分にアピールします。経理職の良さをお伝えできればと思います。
経理職の利点①業務量が安定している
このブログでは何度か言及していますが、経理の仕事を究極まで突き詰めて簡素化して表現するとすれば「日々の金銭残高を一致させる」に尽きます。
もちろん単に金銭残高と言っても、手許現金の残高から銀行残高、取引先との売掛金残高に固定資産の増減管理まで様々あるわけですが、結局は会社が保有するこれらの残高を、日々日々きっちりと把握して会計ソフトや帳簿に記録していく作業には変わりありません。
経営分析だの損益分岐点の試算だのとカッコつけたところで、先述の「残高の記録」が間違っていては、砂地に家を建てるようなもので、何の意味もありません。
そして、その「残高の記録」というのは、年間を見れば凄まじい数ですが、日々で見ると実は大したことがありません。
会社内で振込日や請求日を決めている場合なんかは、その前後に仕事が集中するだけで、それ以外の日は本当に平和なものです。※決算シーズンを除く
つまり「残高の記録」というどこまでもルーティンな作業が経理の基本業務であり、それゆえに突発事項に左右されることも少なく、非常に安定した業務量をキープすることができます。
月単位で業務量を調整すれば、有休もかなり取りやすくなります。「有給休暇制度のしっかりした会社+経理職」というのは、非常に優良な労働環境だと思います!
経理の利点②お金にまつわる様々な知識が習得できる
現在の日本を含む世界は、圧倒的に資本主義社会です。資本主義下においては、通貨の役割が良くも悪くも非常に大きくなります。
お金に関するリテラシーはその人の人生をモロに左右しますし、小さな損の積み重ねが、毒となって後々に効いてくる。私が思う現在社会は、悲しいかな資金力至上主義のようになっているように感じます。
そんな世の中で、経理職ほどお金に触れ、バランスよく知識を吸収できる職種は他にないと思います。
例えば減価償却という会計処理について。
減価償却というのは、固定資産を購入した際に、その固定資産の劣化や陳腐化を費用として毎年計上しよう、という会計の技術です。
固定資産というのは、購入後から廃棄するまで、会社の売上に貢献するわけで、それならば、対応する費用も、固定資産購入時にどかん!と計上するんじゃなくて、数年に分けて均等に費用化しましょうよ、ていう理屈なわけですが、この考え方は家計簿にもそのまま当てはまります。
例えばノートパソコンを買ったとします。もはや生活必需品のパソコンを10万で買って、生活の質はグンと良くなるわけですが、数年経過すれば不具合も散見され、故障・買換えとなるでしょう。
そんなときに「壊れたかぁ。じゃあ買い換えるか。」と、ポンと資金を捻出できるなら問題ないわけですが、日々の生活を何とかやりくりしてる身としては痛い出費になるわけです。
そんなことにならないように、購入したときから減価償却の考え方を導入し、故障時の資金を少しずつ積み立てていくわけです。
ノートパソコンなら、一般的に4年が耐用年数、つまり市場価値をキープできる年数、とされています。なので、仮に購入費用が10万なら、10万÷4年÷12ヶ月、月々2,100円を積み立てることができれば、将来の買換えに備えることが可能なわけです。
「何を今更…」と思われるかもしれません。事実、肌感覚としては当たり前の話なんです。大切なのは、こういうことを世界中の名だたる企業が当然に行っているという現実、すなわち自身の行動への裏付けです。
企業というのは、お金のエキスパートです。法人、個人の違いはあれど、彼らに学び、技術を盗むことは、家計を助ける大きなヒントとなります。大きな買い物であればあるほど、先を見越して経費を積み立てていく工夫が必要だと感じます。
他にも、株式や債券の購入で運用利息を稼ぐ会社の経理なら、投資の基礎が学べますし、税でいえば年末調整で所得税控除の工夫を学べるでしょう。(iDeCoや保険料控除などです。特にiDeCoは、年金型財形貯蓄の上位互換だと感じます。)
給与計算に携わるなら社会保険というセーフティーネットも認識できますし、スキルアップの資格取得に雇用保険の教育訓練給付金が活用できるということも、知らなければ大きな損失です。
社内外の個人情報を扱うことで、同僚や取引相手に代表される、いわば経済社会の主役たちから、ある種プライベートとも言える経済活動のサンプルを合法的に視聴し、抽出して自身のよりよい生活へ活かすことができます。考えようによっては、反則じみたメリットではないでしょうか。
経理の利点③「個人」を脱却した顧客になれる
突然ですが、銀行は好きですか?銀行へローンを組みに行ったり、相談に行ったり。私は大嫌いです。金融業界の方には申し訳ないですが、なんというか、彼らとお話をしていると「あぁ、全然相手にされてないなぁ」て感じることが多々あります。
昔、法事の席で親戚と集まった時の話です。親戚の一人がメガバンクの課長さんだかだったんですが、大酒を飲みながらこんなことを言ってました。
「銀行はねぇ、庶民なんか相手にしたって、ちっとも儲からないんだよ。やっぱり、国や企業に金を預けて、その利子で儲けるのが1番なんだよ。」
正直「庶民の酒の席で何言ってんだこのオヤジは。」という感情しか湧かなかった、マイナス金利導入前のお話ですが、おそらくある意味では真理なのでしょう。いくら個人、それも平均的な庶民が銀行を懇意にしたところで、銀行にとっては些事。ましてや、労力のかかる、ややこしい相談ともなれば、話を聞いてる時間の人件費が勿体ない、そう感じる人も、中にはいらっしゃるでしょう。
しかし、企業の経理となれば話は別で「企業」という大看板を背負って、交渉ごとに挑めます。資金力がものを言う世界、個人を遥かに凌駕する企業の前では、銀行と経理職員の立場は逆転します。
ローンを組む時も、給与振込用の口座を作るときも、銀行は個人の背後にある会社の存在を担保にします。会社に属するというのは、大きな後ろ盾を得ることと同義です。
そして経理職員は、日々これらの銀行員と折衝する関係であることから、それらの法人窓口担当者から、個人窓口担当者の名刺を貰う機会も自然と増えます。
当然、銀行には銀行の規則がありますから、個人窓口の担当者を紹介してもらったからと言って、審査や基準が緩くなることはありません。ですが、門前払いに等しい扱いは少なくともなくなるでしょう。個人として相談しながら、企業からの紹介、という看板をチラつかせることができるからです。
他にも、会社で大量にパソコンを買うとき。自分もちょうどパソコンが欲しいな、なんて思っていたなら、個人的に同じ業者に調達をお願いすることもできます。大量購入するからか、法人間の取引価格は、小売と個人間のそれとは比較にならないくらい安価です。
「個人的に、同じ価格で同じ商品を1つ売って欲しいんだけど。もちろん、請求と支払いは別口で。」と業者に尋ねてみましょう。業者にとっては、50個も51個も、違いはありません。ほぼ間違いなく快諾してくれる事でしょう。(会社のお金で個人用も買ってしまえ、と言ってるわけではないですよ!請求者も納品書も、必ず別にしてもらいましょう。明瞭会計は経理の基本です。内外にいらぬ誤解を招かぬよう、細心の注意を払いましょう。)
とにかく、個人でありながら、会社の看板を武器に、業者と直接交渉ができること。そして、その業者が、お金に直結する職種の方々が中心ということ。これが経理の強みであると言えます。
経理だって、良い職種です
以上、思いつくままに、経理の良いところについて書いてみました。
繰り返しになりますが、特に利点③について、会社の看板を盾にして、相手にパワハラを働けと言っているわけではありません。一顧客として、市民は情報弱者になりがちです。だからこそ、窓口を紹介してもらえるだけでも心の負担は相当軽くなります。そういう機会が、経理職にもちゃんとあるんだよ、というお話です。
経理に限らず、こういうのはあらゆる職種にある特権だと思います。営業職なら広いネットワークで生活のあらゆる場面に活きる顔繋ぎができるでしょうし、技術職ならその分野の最先端に造詣が深いことでしょう。
こういった横の繋がりが、経理職の場合は特に「お金」に縁が深いということ、そして、「お金」に関することが、今の世の中を生きていく上で避けては通れない課題である、ということが、経理職の価値を高めてる、と私は思うのです。
そして、「お金」と同じくらい大切なプライベートの時間も取りやすい、クオリティ・オブ・ライフの現在にフィットした職種、というのは持ち上げすぎでしょうか?(笑)
デスマーチ上等!の決算期にはとても書けない、「経理って良い職種なんだよ」というお話でした。ここまでお読みいただきありがとうございました。