経理職員の苦悩(大袈裟)①

2022年6月12日

こんにちは、美波です。

今日は、私が日々の業務で感じている苦悩について、お話します。

苦悩、と言っても、大したものではありません。「あぁぁー、もうっ!」となるような、痒いところに手が届かない苦悩、ちょっとモヤっとするような事柄、程度のものです。

経理職の方なら、「あるある!」となるかもしれません。実はなかなか同意を得にくい、経理職員の軽い愚痴を、ぜひご笑納下さい。

私が思う名医の条件

突然ですが、名医、とはどのような方を指すのでしょうか。

いち患者として、次の2つのポイントを押さえていることが、名医の条件というか、理想のお医者様だと思います。

1.些細な症状も見逃さず、豊富な知識からあらゆる病気の可能性を検討し、病名を特定できること。

2.検討の過程を逐一伝えて患者の不安を煽るのではなく、必要なことだけをしっかり伝えて、安心に寄与すること。

1つ目については、やはり医学の専門家、しっかりと専門的見地から病状の検討をしていただきたい、と思うのが人情です。

とかく、人は弱ってるとき、自分だけは風邪ではない何か変な病気に罹患しているのではないか、なんて思ってしまうわけで。まぁ99%風邪なのですが、そんなときでもろくに話を聞かずに「はいはい、風邪ですねー。」と言われるよりかは、症状を聞き取りして、検査で他の病気の可能性を潰して、その上で風邪と「診断」していただきたいものです。

そして2つ目ですが、その検討や病気の可能性を、いちいち呟くのはやめて欲しいなぁという個人的願望です(笑)。

「もしこの検査結果がこうなら、非常に確率は低いが脳に障害があるかもしれない」「この病気が変異すれば、ごく稀に手術が必要になるかもしれない」こんなことを言われてしまうと、そこまで覚悟をする必要があるわけで。。

患者には「ごく稀に」の確率が分からないので、あらゆる可能性を検討していただけるのは本当にありがたいし、頼もしいのですが…何というか、何もかも、明け透けに言う必要はないんじゃない?なんて思ってしまったりもします。まぁ、この2つ目の条件は、私の気にしすぎだとは思いますが(笑)

と、名医について理想を述べましたが、私としては、経理だって同じことが当てはまるのではないか、と思っています。

すなわち、条件の1つ目のように、会計原則や経理規程、税計算と言った知識に裏打ちされた様々な要素を睨みながら、仕訳を一つ一つ切っていくような思慮深さが、経理にも必要、と思うわけです。おそらく、ここに議論の余地はないでしょう。問題は条件の2つ目。つまり、今回の愚痴は、「経理だって語りたい」という部分についてのジレンマです。

会社の主力、専門家集団たちの生態

ところで、私は団体職員であり、所属する会社は専門家集団の集合体です。そんな中で経理、総務をしていると、代表電話に同業他社から問い合わせが入ることも良くあります。

「御社ではこの部分について、何か方策は考えておられますか?」「ここの、この箇所が法的におかしいと思うのですが、貴方はどうお考えですか?」こんな専門的な電話がわりと掛かってくるわけですが、一経理職員に回答できるはずもなく、隣の課の専門職員に助けを求めます。

するとまあ、こんな感じで返されるわけです。「うーん、その状況だけじゃ確定できないよね。このパターンも、あのパターンも考えられるわけからね。」「原則としてはこうすべきだけど、ごく稀にこんな場合もあるからね、そうなると…。」「そもそも、この制度ができた趣旨は、過去にこういう事件があったことの反省にあるわけで…。」

そして散々知識をひけらかしたあと、結局電話は代わってくれず、こっちが四苦八苦しながら回答する…こんなことが本当に良くあります。

このような反応をする専門職の方を、同僚と「学者肌」なんて揶揄したりもしてますが、とかく理屈っぽくて、その上に実行性がない。電話を保留にしてると告げているのに、語るに落ちるその様子からは、同社の職員ながら、少し冷たすぎやしないか、と感じることがあります。

言うなれば、彼らは先ほどの条件2を満たしていない、と言えるかもしれません。

経理職員だって講釈を垂れたい

で、そんな彼らが経理を頼ってくることがあります。と言っても、内容は取るに足りないことがほとんど。

「この振込、振り込み指定日以外に振り込める?実は明日が振込期限なんだよね。」とか「ポスターを刷りたいんだけど、勘定科目って何使えば良いの?」とか「パソコン買いたいんだけど、予算まだある?」とか…。まぁどの会社でもよく聞かれる、定番の質問たちではないでしょうか。そんな陳腐な質問が、かの専門家集団から投げかけられることがあるわけです。

こういう場合、彼らはこれらの質問を、非常にこともなげに尋ねてきます。質問しているのに心ここに在らず。なぜなら彼らにとっては、経理の解釈いかんではなく、その先の彼らの事業が無事に達成できるか否か、にあるからです。我々経理の意見など、大事の前の小事、なんなら自身の目標のために邪魔なもの、という認識なのでしょう。

だけど。私だって経理職員の端くれ、経理で飯を食うものとして、信念を持って仕事をしています。

なので、「振込日を指定しているのは、誤振込の防止と事業担当者のスケジュール管理の一助の意味があってね…。」とか「勘定科目は結果ではなく過程の思想を反映させるべきで、そのポスターが広報目的なのか求人目的なのか、その用途が重要なんだけど。」とか「予算上は購入可能だけど、今期は収益が上がってないから、次年度に購入すべきだと思う。ところでパソコンの価格はどの程度を想定してる?一定額以上なら固定資産扱いになるし、そうでなければ消耗品として一括で経費として落とせるわけだから節税効果が…。」なんてことを、先ほどの質問に対しても思うわけです。言いたいわけです。経理だって、語りたいわけなんです。

自重?自虐?

だけど、私は多くは語りません。もちろん聞くべきことは聞きますが、その質問の意味なんかは、尋ねられない限りは伝えません。

なぜなら、名医の条件2つ目にもあるように、そんなのは知識のひけらかしに過ぎない、と思うからです。

時間のない中、決められた作業量をこなさなければならない専門家集団にとって、真に欲しいのは質問に対する回答であって、回答までの過程ではありません。だから、回答は的確に、端的に。もちろん、会社の資金を司るものとして、時には真っ向に立ち向かいます。ですが、そうでないときは、同じ組織の同僚として、事業の円滑な実施をサポートすること、それが名医ならぬ名経理なのではないか、と考え、私は実行しています。

と同時に、培った知識を披露する場がないことを少し寂しくも思います。どんなに自己を研鑽しても、会社にとって必要なのは、「経理は良いと言った」という言質だけなのかと思うと、悲しくもなります。そして、経理なんて所詮裏型、それも嫌われる側の裏方なんだよな、と自虐したりもするのです。

たまには聞いてあげてください

他人は自分を写す鏡、なんて言葉があるように、経理の愚痴はその他業種の愚痴でもあるでしょう。「経理なんて、金のこと以外言わないじゃん!私たちだってお金に現れないとこで頑張ってるんだから!」なんて反論があることは重々承知していますし、反省もしています。

ですがまぁ、経理職員としては、たまには経理と話をしてほしいなぁなんて思ったりします。

言質取りの質問の後に、「ところでなんでそんな結論になるの?」なんて聞いてみてください。

経理には経理なりの理屈があります。だけど、まともな経理職員なら、その理屈は営業や企画といったその他の業種の人の支援に繋がっていることが多いんです。

縁の下の力持ち、なんて言うと美化しすぎですが、それでもそれなりの専門性と使命感をもっている、経理ってそんな職種だと思います。

……要するに日陰者の愚痴、て感じですね(笑)経理職の皆様から「あるある」と思っていただければ幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました。