経理事務と監査法人

2022年6月12日

こんにちは、美波です。

決算業務もようやく目処がたったので、また少しずつ経理の日常を更新していきたいと考えています。

「経理って何をしてるの?」「経理って数字で遊んでるだけで、収益に貢献しない金食い虫でしょ。」経理に対する、こんな一般的なイメージに対して、現役経理職員なりの楽しさや苦悩、やり甲斐などを紹介するのがこのブログの一大コンセプトなのです。

さて、今回は、ちょうど決算期ということで、監査、つまり公認会計士さんと経理職の関係を書いてみようかと思います。

監査法人って何する者ぞ

監査法人って、何をする人なんでしょう。

Wikipediaによると、「他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明を行う」公認会計士の組織、といった内容が出てきます。

公認会計士法を紐解いたわけではありませんが、感覚的に平たく言うなら、財務諸表が健全であるかを専門家的見地から精密に確認し、その会社の決算書を見る人達に「この会社の決算書、ちゃんと作られています。信じて大丈夫です。」とお墨付きをくれる人達、と言ったところでしょうか。

決算書というのは、正確に作られているようで、実は会社の中の経理担当者の力量によるところが非常に大きく、ともすれば、間違いだらけのとんでもない決算書が世に出ることは、さほど珍しいことではありません。

にも関わらず、厄介なことに、ひとたび製本されて、決算書のテイをなしてしまえば、なんとなくしっかりとした書類に見えてきますし、ある程度の知識のない人には、ひと目見て「これはおかしいぞ」と気づくことは非常に難しいのです。

一方、決算書というのは、例えばその会社への出資(その会社の株を買う、というのも立派な出資です)等の判断には欠かせないものでもあります。

結果、メロメロの決算書を信じて、メロメロな投資判断を行い、自己の資産が著しく毀損される、という危険が付きまといますし、これを自力で防ごうとなると、出資の都度、逐一その会社の決算書を、その成り立ちから検証しなければならなくなり、スピーディーな投資判断、ひいては健全な経済活動が阻害されます。

そのような社会の損失を防ぐため、その道のエキスパートとして公認会計士を国家資格として定め、彼らに決算書のチェックをさせることで、真に信じるに足る決算書を創り出す、これが公認会計士の役割である、と私は思っています。

社会的責任を負った、正に孤高の職業です。

経理職員にとっての監査法人

では、経理職員にとっての監査法人とは、どんな印象なのでしょうか。

先に言っておきますが、これは私の意見です。彼らの職責、社会的使命について、なんら疑うものではないとした上で、あくまでイチ経理マンとしての私の意見ですが

いやもう、ほんと、めっちゃ鬱陶しい!

の一言につきます。

忙しい時期にゾロ首揃えてやって来て、決算の数字固めてる最中に、やれ給与明細持ってこいだの、過去の稟議書持ってこいだの…。その資料、部署が違うから、今から担当者に頭下げて取り寄せないといけないんですけど!

決算数字にしても、各部署からの報告待ちなところもあって、固まる部分と固まらない部分があるのに、そういう要素は度外視して数字の確定を急かしてくるし、まだだって言ってるのに財務諸表のチェックをした挙句、案の定数字が動くととても嫌そうな顔をする。

そして何より嫌なのが、「表示のチェック」と呼ばれる過程。このチェック、各決算書類の様式をチェックするわけですが、これがまた素人目には意味不明。何を隠そう、チェックの内容として、財務諸表の表示・表記が含まれるのですが、文字の大きさから罫線のあるなしまで、公認会計士協会だかが定める様式例と、寸分違わず一致しているかをチェックされるわけです。

数字確定、理事会資料など、実務的にやることが多々あるこの決算期に、実質的な「中身」のチェックならともかく、完全に見た目だけの「形式」について細々指示を受けるのは、正直やってられないの一言に尽きます。

とはいえ向こうは最難関国家資格保有者、一見自己満足にしか見えない「表示のチェック」とやらも、自分のような一介の経理担当者には預かり知らぬ社会的意義があるんだろう。そう、例えば、様式を均一化し、市場における比較性を高めることで、企業の国際競争力を高め、企業価値の向上を図る!みたいな。

そう思った私は、その疑問を担当の公認会計士さんにぶつけてみました。「表示のチェックって、そういう企業価値の向上、みたいな理念があるからここまで細かくなっちゃうですよね」と。

すると、対する会計士さんの回答は。

「いやぁ、まぁそういう面もないことはないんですが…。なんというか、決まりごと、なんで…。それに、罫線がひとつ欠けてたりすると、監査法人内の決裁が降りないんですよね…。」

ええ!?そんな理由だったの!?

他にも、とにかく横柄な会計士さんもいらっしゃって、「一経理担当者なんぞ、なんぼのもんじゃい!」と言わんばかりに、こちらのことを顎で使う人もいました。(10人ほどの会計士さんにお会いしましたが、横柄な方はこの1人だけでしたが。念のため。)

まぁ、難しい職業だと思います。監査料を頂戴しながら、その会社に与することなく第三者を貫かないといけないわけですから。ただまぁ、繁忙期に色々負担を強いられると、「金払って、なんでこっちが窮屈な思いしないといけないんだ!」て気持ちになるのは正直なところです。私の職場のように、上場してるわけでなく、広く出資を募るわけでもない会社だと、余計にその傾向は強くなる気がします。

そんなわけで、敵、とは言わないまでも、経理職員にとっては色々と厄介な存在、それが監査法人、ということになるのではないでしょうか。

監査対応経験は需要があります

なかなか対応が大変な監査法人。経営陣にとってはやはりネックなのか、経理の求人を見ていると、「監査法人対応経験あり」との文言も目立ちます。

そもそも質問が細かすぎますし、注記や付属明細書までが指摘の範囲に入ります。会計の専門用語のオンパレードで、税務との衝突もあるでしょう。

経理担当者としては、会計士を納得させつつ、会社の利益を最大化し、株主総会や銀行融資に耐えられる決算書を作ることが至上命題です。

正直鼻持ちならない思いもするでしょうが、向こうは豊富なバックグラウンドをもった専門家です。主張すべきところは主張し、交渉し、譲歩を引き出すことが、経理マンとしての腕の見せどころです。

そして、その駆け引きの経験は、自身の市場価値を高めます。ぜひ臆することなく会計士と向き合ってみてください。

監査法人は変更できます

因みに。どうやっても会計士と折り合いがつかない、相性が悪いと感じた場合、監査法人は任意に変更することができます。

「一つの会計士が継続して監査することに意味があって…」「監査法人はコロコロ変えるようなものではなく…」と、相手さんは仰るでしょうが、選択権は被監査対象の我々にあります。

近年では、高騰する監査報酬に嫌気が差して、大企業がより安価な監査法人に変更するケースが多いとの調査報告もあります。

事実、私の勤め先でも、監査法人を変更しています。新旧監査法人間の業務引き継ぎがあったりしますが、そこは監査法人が勝手にやりますので、こちらの負担にはならないでしょう。(ただ、旧監査法人に業務引き継ぎ料を支払わないければならない、というのが慣習のようです。このあたりも、素人感覚には馴染まないものですね。)

私の会社では相次ぐ監査報酬の値上げに辟易して、監査法人を変更しました。新しい監査法人は、安価な報酬はもとより、監査のポイントを絞って業務に取り組んでいただいているので、経理担当者としての仕事は相当軽減されたように思います。

経営陣は漠然と、監査法人は変更できない、と思い込んでいるかもしれません。現状に不満がないなら問題ないですが、報酬が高すぎる、監査態度が横柄すぎる、といった課題を抱えているようなら、経理担当者として思い切って監査法人の変更を提案してみてもいいかもしれません。選定は大変でしょうが、上手くいけばそれ以上のリターンを得られることでしょう。

監査対応も経理の職務

ということで、経理のお仕事、監査対応編でした。

あまりやりがいを感じない業務ですが、「昨年と同じ指摘はされたくない!」と思って業務に挑めば、成長を実感できる業務でもあります。

どうせなら前向きに挑みましょう。ついでに、コストパフォーマンスも勘案しつつ、不満が多ければ監査法人の交代も提案してみましょう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。