衛生管理者受験記録~勉強編~

2022年11月24日

こんにちは、美波です。

前回に引き続き、衛生管理者の話です。

今回は「受験」に焦点を当てて、自身の経験を踏まえつつ合格率や出題形式、勉強方法についてお話ししたいと思います。

衛生管理者の試験について

衛生管理者は第一種と第二種の2つの区分があります。

詳細は試験を実施運営している公益財団法人 安全衛生技術試験協会のHP( https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku502.htm)に詳しいですが、第二種衛生管理者については

(1)労働衛生に関する出題(10問)100点
(2)関連法令に関する出題(10問)100点
(3)労働整理に関する出題(10問)100点

第一種衛生管理者の場合

(1)労働衛生に関する出題(10問)80点
   うち有害業務に関するもの(7問)70点
(2)関連法令に関する出題(10問)100点
   うち有害業務に関するもの(7問)70点
(3)労働整理に関する出題(10問)100点

となっています。

いずれも試験時間は3時間。合格点は、(1)(2)(3)それぞれで40%以上の正答率があること、かつ(1)~(3)全体で60%以上の正答率があることです。
各科目に足切りがあり、なおかつ全体で一定の正答率が必要、というのは、社会保険労務士試験なんかと共通ですね。
科目によって得意不得意を作ることを許さず、試験科目全般への知識の定着を問う、ある意味スタンダードで、予想以上に負担の多い試験形式です。

設問はいずれも選択式。5つの選択肢から、問題文に合致するものを選ぶ択一式試験です。

第一種衛生管理者は、有害業務に関する出題が追加されており、勉強範囲が増す分、負担増となります。また、有害業務に関しては、「ベンゾトリクロリド」(なにそれ…と、未だに思います)のような化学物質の名称が出てきますので、人によっては拒否反応を起こす方もいるかもしれません。

合格率について

令和3年度の合格率は以下のとおりでした。

第一種衛生管理者 68,210人 29,113人 合格率42.7%
第二種衛生管理者 36,057人 17,922人 合格率49.7%

(公益財団法人 安全衛生技術試験協会HPから引用 https://www.exam.or.jp/exmn/H_gokakuritsu.htm )

それ以前の合格率について、同HPに記載がなかったため明示していませんが、私が合格したの平成28年当時は、第一種衛生管理者で50%、第二種衛生管理者で60%程度の合格率だったと記憶しています。

対して近年はいずれも50%を割り込む合格率となっており、やや難化傾向にある試験、と言えると思います。

合格率と体感的な難易度について

ここで私の実体験を交えて難易度についての肌感覚を述べたいと思います。

衛生管理者についてネットで調べると、「国家資格としては破格の低難易度」「一夜漬けで一発合格も可能」といった趣旨の評価がたくさん出てきます。

そこで私の場合はどうだったかと言いますと、私は第一種衛生管理者の試験で1度不合格となっています。

なので、世間一般の「簡単な国家試験」という風潮に対して安易にうなずくことはできないのですが、敗因を探るとすれば「モチベーションの管理」が非常に難しい試験だ、ということでしょうか。

前回の記事でお話ししたとおり、この資格は労働者が主体的に受験するというよりは、事業主から業務命令で受験させられることが多い資格という印象です。

私のその例に漏れず、所属長の鶴の一声で嫌々受験した身だったのですが、当時はほかの国家資格の勉強中だったということもあり、正直一回目の受験時はあまりしっかり対策したとは言い難い勉強内容でした。

結果、合格点に2問ほど足りずに不合格となっています。

なので不合格者からの声としては、簡単な試験とはいっても、難化の傾向もあり、油断すれば普通に落ちる試験です。

受験までの経過は業務命令という受動的なものだったにせよ、受験すると決めた際には能動的に高いモチベーションを保って勉強し、さっさと合格してしまいましょう。

(衛生管理者は転職にも役立つよ!という私見については前回の記事を参照してくださいね。)

落ちてしまった人、大丈夫ですよ、普通に二人に一人は落ちる試験です。連続で落ちる人もザラにいます。めげずに勉強を継続してください!(というのが、不合格経験者の私からのエールです。)

勉強方法について

勉強法については大きく2種類が考えられます。

(1)予備校等が主催する研修・セミナー等を受講する。

衛生管理者についても、ほかの国家資格と同様に各予備校が講座を開設しています。
(このような予備校が活躍している時点で、衛生管理者試験がそれなりの難易度であることの裏付けだと思います。)

試験そのものが択一式の試験であり、論文式と違って脊髄反射的な解答能力が求められる試験であることから、ポイントを絞って論点整理ができる講習の受講は非常に有意義だと思います。

自動車の合宿教習みたいに2日3日の短期集中講座で成果を上げている講義もあります。

会社命令での受験であり、費用や受講日の有給対応等についても理解のある職場であるなら、非常に有効な選択肢であると思います。

(2)市販教材等による独学での勉強

会社命令ではなく自主的な受験である場合、または会社命令ではあるものの経費負担に理解のない会社に所属している場合は独学一択となります。

(私も会社補助はテキスト代と受験費用だけだったので独学でした…。くそっ!)

こちらの場合は質の高いテキストをとにかく複数回回すことで、習熟度を深めていくことが合格への近道です。

以下、私が実際に使用したテキストを紹介します。

・スピード完成!第1種・第2種衛生管理者 合格直結300問

私が使用した「1回で受かる!出るとこだけ!!第1種・第2種衛生管理者頻出300問」の新版になります。

出題項目ごとに章立てされており、各省の冒頭には非常にコンパクトにまとまった論点の開設が掲載されています。その後、根拠法令や分野ごとに頻出問題と解答解説が交互に掲載されていますので、章の初めに全体像を把握し、直後に演習を繰り返すことで知識の定着を図ることができます。

巻末には本試験の模擬試験1題が掲載されており、これ一冊で基礎力から本試験の形式対策までを一貫して行うことができます。

・7日間完成 衛生管理者試験合格塾

先ほどの300問が問題集とするならば、こちらは解説に特化したテキストになります。

300問でコンパクトにまとめた内容を、より言葉を割いて解説したテキストになります。

こちらも巻末には模擬試験が掲載されており(こちらは2回分)本試験対策にもってこいです。

・インターネット上の無料公開問題を利用する。

第一種衛生管理者過去問|試験問題をクイズ形式で出題

https://kakomon-quiz.com/1eisei/

国家試験は試験結果が広く公開されており、ネット上にも毎年試験問題と解答が公開されます。

これらの問題・解答を集約し、掲載したうえで、クイズ形式で公開してくれるサイトも多数あります。

お昼休みや通勤中の電車の中等、スキマ時間を活用して解答に勤しみ、反復練習により実践力強化に努めましょう。

私の勉強方法

最初は「7日間完成 衛生管理者試験合格塾」をとにかく読み進めて、全体把握に努めました。

読むこと重視でしたので、実際には4日程度で読み切ったでしょうか。無論、この時点では試験対策としての問題の傾向なんかは把握できていません。

「あー、結構細かいとこまで聞いてくるんだなぁ。」とか「この辺の数字、引っかけてきそうだなぁ。」という感想を持ちながら取り合えず読み切った感じになります。

なお、反省を踏まえての私見ですが、読み進める際は、出題について予想して読む手を止めるのはやめたほうがいいかもしれません。とにかく全体像の把握が大切なので、問題を見る前から「こんな問題が来たらヤバいかも…。」と踏み込んで構えてしまうと、結果的には出題の頻出論点が全然違って、文字通り時間の無駄になる恐れがあります。一読の際は完璧主義にならず、サクサク読み進めましょう。

で、「7日間完成 衛生管理者試験合格塾」を読み終えた後は「頻出300問」を繰り返し演習します。

「頻出300問」は演習問題の次ページに解答解説がありますので、演習後即復習で知識の定着が図れます。

先ほどの「7日間完成」とは異なり、「頻出300問」の解説はしっかり読み込み、その都度理解するようにしましょう。

どうしても解答解説では納得いかない・腑に落ちない場合は、「7日間完成」やインターネットでキーワード検索し、少し掘り下げて理解に努めましょう。

ただし、初回演習時の深入りは禁物です。

経験上、この手の択一試験は、満遍なく、そこそこの知識定着が要求されます。

項目ごとに掘り下げすぎると、他の項目まで手が回らず、結果として試験合格が遠のきます。

正解すれば〇、間違えたけど解説やネットで設問の意図が理解できたら△、5分考えても分からなければ、設問に×をつけて、次の設問に進みましょう。

設問は300題ありますので、1日20題程度を目安に、2週間ほどで問題集を1周が目標でしょうか。

さらっと言ってますが、このスケジュール感は、衛生管理に関する事象に対して全くの素人の方だと、相当にしんどいと思います。

この衛生管理者試験、難問奇問の類は少ないのですが、なにせ普通に職場で勤務しているサラリーマンにとっては初見の言葉が多く、追いかけても追いかけても言葉が上滑りしていくような錯覚を覚えます。

あまりこだわらず「あー、そうなんだ。」と思える人は大丈夫なのですが、逐一自分の中の知識と照らし合わせてしまうような性格の人は沼に嵌まる危険性があります。

前述のように、「満遍なく、そこそこの知識定着」が大事です。回数をこなして、少しずつ知識を積み上げましょう。

また、このスケジュール感だと、最後の問題が終わるころには、最初の問題はほぼ確実に忘れています。

なので、備忘のため、例えば3日目には1日目の復習をする、といったように、常に復習を心がけましょう。

この復習については、初回ほどの熱量でする必要はありません。例えばの×の部分の解説だけを黙読で復習する、といった具合に、とにかく完全に忘却してしまわないように工夫するだけでいいのです。

また、この備忘のトレーニングについては、先に紹介したインターネット上の無料公開問題が非常に有用です。

例えば私が紹介した「第一種衛生管理者過去問|試験問題をクイズ形式で出題」のサイト様では、出題科目別に問題を整理して提供してくれています。

職場上での昼休みや暇な時間、通勤時の電車の中等で、クイズ感覚で解答することで、課題となる勉強済み項目の忘却を防ぐことができます。

このように、無料のサービス等を積極的に利用しつつ、「頻出300問」を最低3回転することで、衛生管理者試験合格に必要な知識と解答のコツ(どの部分が論点・頻出かという点)が最低限身についているはずです。

正直、この国家試験対策としては、1周目が衛生管理者試験の最もしんどい時期だと思います。

ここさえ乗り越えれば、設問はすでに見た問題ばかりなので、解答スピードは格段に上がるでしょうし、2週目は△と×の部分だけを解いてみよう、といった風にメリハリをつけることもできます。

とにかく△・×の箇所を徹底的につぶして、「これは全く分からないな…」という問題がない状態を目指しましょう。

さて、上記のように「頻出300問」で基礎力が身につけば、いよいよ大詰め、実戦形式での問題解答です。

「頻出300問」には巻末に1題、模擬試験が収録されています。また、「7日間完成」には2題の模擬試験が収録されています。

これらの模擬試験を、きっちり時間を測って本番さながらの緊張感で解いてみましょう。実際に3時間待機する必要はないですが、時間内に解き終わったら、同じ緊張感のまま1回くらいは見直しもしてみましょう。

模擬試験の各設問は「頻出300問」で見たことがある問題ばかりだと思いますが、いざ解いてみると、選択肢の並びが違ったり、選択肢が設問間で入れ替えられていたりと、意外と苦戦するかと思います。

模試で間違ったところは、まだ知識の定着があやふやな箇所だと思いますので、再度「頻出300問」の練習部分に戻って、項目ごとの個別の設問・解説で復習しましょう。

このようなペースでうまく学習できれば、比較的短期間で合格水準の知識が身につくはずです。もちろん働きながらだと時間が取れない日もあるかと思いますので、調整しながら試験本番にピークを持って行ってください。ただ、なにせ範囲が広めなので、長期記憶を維持するのは精神的にもしんどいかと思います。なるべく短期決戦で挑むことをお勧めします。

私の受験の振り返りと反省

ここで、私の受験を振り返ってみます。

基本的には上記と同じ方針で勉強をしていました。

ただ、1回目は、急な資格取得命令だったこともあり、時間的な余裕もなく、試験の形式に対する備えが不十分でした。

「頻出300問」の模擬試験は1回転しかできず、しかも形式にてこずったため点数も伸び悩み、「本番大丈夫かなぁ…。」という自信のない状態で試験に挑むことになってしまったのが最大の敗因だと思います。

ですので、アドバイスとしては、本番の試験を見据えた対策もしっかりしておきましょう、ということになります。

基礎力強化で個別問題を解くのは当然大事なのですが、それはあくまで合格基準のうちの「各項目につき40%以上の正答率」をへのアプローチにすぎません。

衛生管理者に合格するためには「全体として60%以上の正答率」というアプローチも必要であり、そこは本番形式への対策、という戦略的な要素が大事だ、いうことになります。

また、私は未知の情報や単語があると手が止まってしまう傾向があるため、それを防ぐために事前学習教材として「7日間完成」を読んでいましたが、もしも知らない単語に出会っても、それはそれとして読み進められる力があるようでしたら、「頻出300問」のみに教材を絞って学習するのもいいかもしれません。

というのも、「7日間完成」と「頻出300問」は同じ出版社から出ており、相互に補完しあう内容ではあるのですが、自分が勉強しているときに「頻出300問」で疑問に感じた個所を「7日間完成」で調べようとしたときに、何故か説明が一致していないように感じることが数回あったからです。

この感覚的な矛盾に嵌まってしまうと、時間を大幅にロスする上に自信もなくなりますので、「7日間完成」を使う際にはあくまで事前の読み物として利用し、勉強は「頻出300問」のみで行く、とするのもアリだと思います。

ということで、おすすめの方法としては、まずは「頻出300問」を本屋さん等で立ち読みしてみてがいかがでしょうか。

とくに読み詰まることなく一問一答を繰り返せるようなら「頻出300問」で知識の定着と解答力の強化を図りましょう。逆に「知らない単語ばっかり!これは無理だ!」と拒否反応を起こすようであれば「7日間完成」を読んで事前知識を定着させて、その後「頻出300問」で解答力を身につける、というやり方がオススメです

あくまで国家試験です。油断なきように。

というわけで、衛生管理者の勉強法について、結構細かめに記事にしてみました。

ネットで衛生管理者と調べてみると、とかく簡単である、といった記事が目立ちます。

確かに合格率は低くないのですが、正しい表現としては「国家資格としては」簡単な部類である、というのが真相であり、十分な準備ができずに受験してしまうと普通に落ちてしまう、シビアな試験でもあります。

受験を強要されて、その上でプライベートの時間までもその勉強に奪われるというのは、内心納得いかない面もあるでしょうが、油断して再受験となっては元も子もありません。

受験失敗の経験談が、皆様の一発合格の糧になれば幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。